「マチネの終わりに」を読んで

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 大人の男女の出会いと別れ、そして再会の物語 と聞いて1年前から気になっていた本。
何度か本屋さんで飛ばし読みし大筋は知っていたけど通して読むと細かいところまで繊細な文体が行き届いていてすごく良かった。
 超絶テクを持つクラシックギタリストと彼の小さい時からのファンフランス人の映画監督を父に持つ女性とのプラトニックだけど熱い恋。初めての出会いそして長い別離、二度目の出会いと抱擁、そして運命のいたずらにより引き裂かれて。。と書くと月並みな展開に見えるけど男性の薪野も女性の洋子もとても繊細で美的センスにあふれ聡明ででも年相応に踏みとどまってしまうところなどとても美しいなと思ったお互いの前では子供で相手の気持ちを伺い、不安になる。
最後の再会の後二人がどうなるかは書かれてなくてとても気になる実際その後を読者が推測したブログもあるくらいだが最初の出会いで心繋がった相手とは一度隔たってもすぐ元に戻れる気がする。
結婚という生活の場を共にしないからこそ二人は美しく在れるのかもしれないがお互いをずっと心の中に灯し続けそれぞれギター、社会問題に対し取り組み続けた二人。
夫の浮気相手のスノッブさを批判する洋子さんのくだりとか薪野がスランプから立ち直るまでの過程の描写も好きだ。
宝石のように輝く少年のような心を持ち続けているからこそ二人は響きあい、惹かれあったのだと思う。
 薪野は洋子を通じてギターの弾き方、好きな曲も変わった。本当の恋はその人の好みまで変えてしまうくらい強烈なものだろう
 時が経ち、いろんな人と巡り会ってもどうしても忘れられない。あなたにそんな人はいますか?
 わざと難しい漢字を多用しているがそれも現代の源氏物語みたいな感じでお洒落な感じがする。
作者平野啓一郎の「高瀬川」も読んでみたくなった。