2014年7月19日  村上春樹「女のいない男たち」を読んで

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 今年4月に発売された村上春樹の新作短篇集「女のいない男たち」は「まあ急いで買って読む必要もないだろう」と気長に図書館に入荷するのを待ち、例のごとく図書館に入荷したとたん長い予約待ち状態で先週やっと順番が回ってきて読んだ。
 表題作を含む全6編。「女のいない」とあるが「女がいた」頃の話に始まり彼女を失うまたは別れた後までを描く。
 どれも村上春樹の長編のような難解さは無く、読みやすくてしかもちょっと深い。読後感も良かった。
 僕が気に入ったのは「イエスタデイ」と「独立器官」、「ドライブ・マイ・カー」
「イエスタデイ」はバイト仲間の友達に幼なじみの彼女と付き合わないかもちかけられデートするが、その彼はある日突然行方をくらますという話。彼女が魅力的に描かれていて随所に村上春樹のキメフレーズ炸裂で面白い。
 「独立器官」は完璧なプレイボーイだったはずの美容整形外科医が本物の恋に落ち、あげく何も食べれなくなって衰弱死してしまう。
 女性も男性も心とは別のものに恋をする。それも心とは別の独立器官で。という話。
「ドライブ・マイ・カー」で不倫をした奥さんが男のどこに惹かれたのかとを必死に探ろうとする主人公に「心ではなく体で惹かれただけ」というのもクールで切ないですね。 村上春樹は短編をあまり書かないがその中では一番だった。そして「国境の南太陽の西」が読みたくなった。また「ノルウェイの森」みたいな恋愛小説を書いてくれないかなと思いますが村上春樹ももう65歳ですからね。