読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

2016.10.16 完熟柿とS君のこと

エッセイ

f:id:tatumac:20131030095444j:plain

 秋もだんだん深まり果物はぶどう、梨もほぼ終わり柿の季節となった。
 柿というと大学時代の友人S君のことを思い出す。彼とは大学の同じ専攻で2年の頃から親しくなった。
 高校の時アメリカに1年留学していてブルース・リーに傾倒し少林寺拳法もするというマョチョな面の一方で理系なのに哲学、言語学文化人類学にも詳しかった。
 2年の冬に彼の部屋で親しい仲間と寒いからみんなで鍋しようと発作的に決めてその足で近くのホームセンターに鍋を買いに行き、スーパーで具材を買って1時間後に皆で鍋を囲んでいたのもいい思い出だ。
 彼は料理が上手かった。そしてちょっとした道具、家具は自分で工作してしまうくらい器用だった。
 一度僕の部屋に女の子をたくさん呼んでパーティーした時、遅れてきた彼に自作のチーズケーキで女子全員の関心を持って行かれ悔しい思いをしたこともある。
 でも僕らは仲良くて3年次には同じバンドのキーボードとギターだった。
 そんな3年の秋、大学近くの料亭でバイトしていた彼は親しい仲間をその料亭に招待してコース料理を振る舞ってくれた。
 全ての料理が完璧なまでに美味しかった。そして最後のデザートに出てきたのが柿だった。とても熟れていて口の中でとろけた。
 彼は正直で純粋でとても真っすぐだった。だから逝ってしまったのかもしれない。
 S君。僕は君が逝ってしまった後でもこの世でもがいているよ。生きていればいいこともあったよ。
 君と最後に上野の料亭で飲んだ時のことを忘れない。
 本当なら君とまたコース料理食べながら楽しい話がしたいよ。そして最後の締めはもちろんとろとろの柿でね。
広告を非表示にする