2014年2月7日  「My Song」第11回

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 夏休みが終わり、僕は東京に戻ってくるとすぐに美加さんのところに電話した。

 「アナタノオカケニナッタデンワバンゴウハゲンザイツカワレテオリマセン」

 受話器の向こうで機械が愛想なく答えた。これは一体、どうしたことだろうと僕は思った。

 九月の終わり頃になっても彼女からの連絡はなかったので僕は日曜日の朝に彼女のアパートまで出かけてみた。彼女はいなかったし、ドアについた名札は取り外されていた。窓はぴたりと雨戸が閉ざされていた。管理人に聞くと美加さんは三日前に越したということだった。どこに越したのかはちょっとわからないなと管理人は言った。

 僕は仕方なく寮に戻ると彼女の名古屋の住所に宛てて長文の手紙を書いた。美加さんがどこに越したにせよ、その手紙は彼女宛に転送されるはずだった。

 僕は自分の感じていることを正直に書いた。

 僕はまだ君との関係をよく把握していないし、そのために君にあるいは知らないところで迷惑をかけたり、傷つけてしまっているかもしれない。でも君は今のところ僕の唯一の「理解者」であるし、世界と繋がる唯一のラインなんだ。君とこのまま会えなくなってしまうのはとても辛くてやりきれない。誕生日の夜、君を怒らせたりしてとても悪いことをしたと思っている。でも、僕達は根気よく話していけば必ず分かり合えるはずだし、そうしなければいけないと思う。とにかく、君に今すぐにでも会って話をしたい。返事を待っている。 そんな内容の手紙だった。