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2013年11月22日 小説『リボルバーを胸に・・』解説(1) 一方通行と監視への反撃と第二回

昔書いた小説

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この小説で主人公の正晴はウォークマンで様々な曲を聴きながら夜の東京を歩いて行く。様々な曲がそれぞれ意味を持ちながらバックミュージックのように小説の背景を埋める。

 ウォークマンのラジオを聴くという一方通行のコミュニケーションを、だが主人公はラジオ局を選局するという行為、あるいはラジオDJにリクエストの電話をするという行為で双方向のコミュニケーションを試みる。

 そして失恋。去って行った彼女達。ところが正晴は半ば被害妄想的にこう考える。「俺は誰かに監視されている」と。そしておもちゃのリボルバーとルシアンルーレットのように選局できるウォークマンを片手に反撃に出ようとするのだ。

 最初にこの小説を大学時代に親しかった女性に読んでもらったら「不気味だ」と言われてしまいうなだれたのを覚えている。男の友達の方が好意的だった。

 無論、副題の『マーク・チャップマンに捧ぐ』はジョン・レノン暗殺事件を念頭に置いている。

 では二回目をどうぞ。

 

                                                (2)

 銀座を外れるとめっきり人気がなくなる。みんな、さっきのニュースにびびってるのだろうか。救急車のサイレンが遠くに微かに聞こえる。

 僕はみじめなクリスマス・ラバーだった。イブを一緒に過ごそうとしていたまゆみから急に断りの電話が入ったのは先週だった。「もう、電話しないでほしいの」と彼女は言った。「あなたは私のことなんかちっとも考えてないわ、さよなら」電話は一方的に切れた。

 正晴は思い返す。自分の前を通り過ぎて行った女の子達のことを。正晴はいつも4回目のデートでバイバイされる。5回目の約束をしようと電話すると彼女達はきまって都合が悪いと言い出す。そして去って行く。だが次の日、彼の前にはまだ見知らぬ女の子との出会いが待っているのだ。

 美佐子、幸子、優子、光子、まゆみ、めぐみ、俺は忘れない、彼女たちの微笑みを。そして、最後のデートのときの悲しそうな瞳を。

 だが俺は何なのだ。と正晴は思う。あんなに盛り上がってたのになぜ彼女たちは去って行ってしまうのだろうか。

 正晴は次第にある結論に達する。試されているのだ。でも誰に。一体、何のために。彼女達はきっと俺と付き合っていると誰かに知れて嫌がらせを受けているのではないか・・・実際、美佐子は僕とデートをするようになってから良くいたずら電話が掛かってくるようになったと言っていた。それに、そういえば一回、恵子に聞かれたことがある「あなた、CIAに友達いるんだって?」その時はなにをこいつは言っているのだろうとちんぷんかんぷんだったが、もしかしたら俺は・・・  危険人物?要注意人物?

 

 正晴は一瞬にして可能性のすべてを計算する。この大切なイブの日をいかに有効に使うか?俺がもし要注意人物だとしたら。それを使って逆に何かおもしろいことをやってやろうじゃないか。でも、正晴はいったい何をやれば良いのかちっともわからずにまた歩き始める。

 正晴はウォークマンのボタンを連射する。俺の心に響くようなそんなハードで挑発的な曲はないのか。この寂しいロンリー・クリスマスの4回戦ボーイに似合うような曲は。

 一度も聴いたことのない曲でも2,3秒で正晴はその曲が自分の気にいるか否かが分かる。いい曲はリフからして心に染みるものだ。ハッピーな曲はごめんだ。失う。とか、会いたいけど会えない、そんなブルージーな曲が欲しい。ないかないかないか、正晴はボタンを連射する。

 そしてすりむいた足にマイキロを塗ったときのように傷口に染みる曲が流れ出す。