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2013年11月21日 『リボルバーを胸にウォークマンを片手に』 第一回

昔書いた小説

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 僕はその日、クリスマスの晩に礼拝に行った銀座の教会のトイレでおもちゃみたいな60口径のレボルバーを拾った。

 おもちゃだと思ったのでみやげにと思ってコートのポケットにそれを忍ばせ、レボルバーことはすっかり忘れて歩き出した。

 『60口径のレボルバーを盗んだガン・マニアが逃走している』というニュースを僕は和光の反対側の電光掲示板で知った。

 パトカーが街行く人に注意を呼び掛け、幸せそうなカップルは食事を中止してホテルへと急いだ。

 僕はすっかりふところのレボルバーの事は忘れていていたし、呑気に「殺されることはないだろう」と思ったのと気分が良かったのでとりあえずもう少しぶらぶらすることにした。

 

 ウォークマンのスイッチを入れる。FMでも聴こう。クリスマス特集をやっているに違いない。正晴はコートのポケットをかきまわし、その四角い玉手箱のスイッチを探し当てるとスイッチを入れる。聴き慣れた声がする。誰だろう?なんだ山下達郎じゃないか。

 「今日は一人でいる人にも楽しめるように番組を構成してみました。」とかなんとか言っている。なんて言いながら次に掛かった曲は『ホワイト・クリスマス』だ。けっ、どこが「一人でも楽しめる」だよ。俺はもっとブルーなのを期待してたのに。

 もっとおもしろいものはないのかなあ。無意識にボタンを押す。カシャカシャカシャ、もう自棄だ。マシンガンを連射するみたいに。ザーッ、「クリスマスはあなたと一緒にいた」カシャ、ザーッ「ウーウーウー(アカペラ)」カシャ、ザーッザーッザーッとその時、聴き慣れた、よくビートの効いたドラムスとハードなギターリフが耳に飛び込んでくる。「次はモッズの『ブルー・クリスマス』です。」なんてイカしたDJなんだろう。クリスマスにこんなハードな曲をかけるなんて。

 正晴はすっかりその曲のビートに乗って歩き始める。あてもなかった足どりが次第に目的を帯びてくる。地下鉄で帰ればFMを聴くことはできない。よーし、このまま、このDJの番組が終わるまで歩き続けよう。正晴は地下鉄の入口を無視して通り越し、まっすぐ北を目指す。   

            つづく