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2013年11月9日   書き換えによる習作4日目

或る阿呆の一生

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芥川龍之介のオリジナル

 

     三 家

 

 彼は或郊外の二階の部屋に寝起きしてゐた。それは地盤の緩ゆるい為に妙に傾いた二階だつた。

 彼の伯母はこの二階に度たび彼と喧嘩をした。それは彼の養父母の仲裁を受けることもないことはなかつた。しかし彼は彼の伯母に誰よりも愛を感じてゐた。一生独身だつた彼の伯母はもう彼の二十歳の時にも六十に近い年よりだつた。

 彼は或郊外の二階に何度も互に愛し合ふものは苦しめ合ふのかを考へたりした。その間も何か気味の悪い二階の傾きを感じながら。

 

     四 東京

 

 隅田川はどんより曇つてゐた。彼は走つてゐる小蒸汽の窓から向う島の桜を眺めてゐた。花を盛つた桜は彼の目には一列の襤褸ぼろのやうに憂欝だつた。が、彼はその桜に、――江戸以来の向う島の桜にいつか彼自身を見出してゐた。

 

 

書き換えたのがこちら

 

     3.家

 

 彼は郊外に借りたアパートの3階に寝起きしていた。そこは地盤が緩く、風の強い日は部屋がゆらゆらと揺れる西陽の強い部屋だった。

  彼と彼の同居人はこの二階で度々喧嘩をした。それは殆ど日常化し、傍目にはじゃれあっているようにも見えた。

 しかし彼はもうこの出口の見えない言い争いに辟易していた。2度結婚し、2度離婚した同居人はほとんど笑うことが無かった。

 彼はその郊外の3階に何度も互いに口論するものはお互いどんな影響をあたえるのか考えたりした。その間もどこか気味の悪い部屋の揺れを感じながら。 

 

     4.東京

 

 江戸川は厚い雲で覆われていた。彼は河原のサイクリングロードから向かい岸のサッカーの試合を眺めていた。サッカーボールはあっちへ行き、こっちへ来たりしながらいつまでたってもゴールポストを揺らすことはなかった。そして彼はそのボールに、――目的地の定まらないボールにいつしか彼自身を見出していた。